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2023.08.08 ICT教育

GIGAスクール構想のメリット・デメリット|現状や問題点も合わせて解説

GIGAスクール構想のメリット・デメリット|現状や問題点も合わせて解説

「GIGAスクール構想」は、教育現場におけるICTの活用を推進するための政策です。一人ひとりの学習習熟度に合わせた授業の実現や、プログラミングのノウハウやITの知識の習得など、多くの効果が期待されています。

しかし、その一方で、保護者への説明や対応、教員のICTリテラシー向上など、様々な課題も存在します。本記事では、GIGAスクール構想のメリットとデメリット、現状と今後の課題について詳しく解説します。

そもそもGIGAスクール構想とは

そもそもGIGAスクール構想とは、文部科学省が提唱する教育改革の一つです。GIGAは「Global and Innovation Gateway for All」の略で、1人ひとりに革新的な教育をもたらすという目的があります

具体的には、すべての公立小中学校に一人一台のパソコンやタブレットを配布し、高速インターネット環境を整備することで、ICT(情報通信技術)を活用した教育を推進するというものです。この構想は、新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が必要になったことや、社会のデジタル化が進む中で子どもたちのデジタルスキルを向上させることが重要だと考えられたことが背景にあります。

GIGAスクール構想は、教育の質や公平性を高めるだけでなく、子どもたちの未来に対応できる人材を育成するための大きな取り組みです。

GIGAスクール構想のメリット/利点

GIGAスクール構想にはどのようなメリットや利点があるのでしょうか?具体的なメリットについて解説していきます。

 

一人ひとりの習熟度にあった授業の実現がしやすい

一人一台の端末を持つことで、生徒は自分のペースで学習することができます。教員は個々の生徒の理解度や進度を把握し、個別にフィードバックや指導を行うことができます。これにより、生徒は自分に合ったレベルや難易度の課題に取り組むことができ、学習効果やモチベーションが高まると期待されます。

 

表現と思考のアウトプットが増える

GIGAスクール構想では、生徒は端末を使ってさまざまな形式や方法で自分の考えや感想を表現することができます。例えば、文章や画像、動画、音声などを組み合わせてポートフォリオを作成したり、オンライン上で他者とコミュニケーションしたりすることができます。

これにより、生徒は自分の思考や感性を豊かにするだけでなく、表現力やコミュニケーション力などの21世紀型スキルを身につけることができると考えられます。

具体的には、早い段階からPCに親しむことで社会人として必要なエクセルなどのOffice系ツールのスキルの習得やキーボード入力スピードの向上などが実現できます。

 

プログラミングのノウハウやITの知識を身につけることができる

GIGAスクール構想では、生徒は端末を使ってプログラミング教育に取り組むことができます。プログラミング教育とは、コンピュータやソフトウェアの仕組みや原理を理解し、自分でプログラムを作成することです。これにより、生徒は論理的思考や創造性、問題解決能力などを養うことができます。

また、ITの知識やスキルも身につけることができ、将来の社会や職業に対応する力を高めることができます

 

教員の業務負担を削減することができる

GIGAスクール構想では、教員は端末や授業支援ツールを活用することで、業務の効率化や負担の軽減を図ることができます。例えば、授業計画や教材作成、評価などの時間や手間を削減したり、生徒の進度や理解度を簡単に把握したりすることができます。

また、オンライン上で他の教員と情報交換や協働を行うこともできます。これにより、教員はより質の高い授業や指導に注力することができます。

 

一斉学習から個人に最適化された学習環境へ移行できる

GIGAスクール構想では、生徒は端末を使って自分に合った学習環境を選択することができます。例えば、学校内外で場所や時間を選ばずに学習したり、オンライン上で他の学校や地域の生徒と交流したりすることができます。

また、教員は端末や授業支援ツールを使って生徒の個性やニーズに応じた授業や指導を行うことができます。これにより、生徒は一斉学習から個人に最適化された学習環境へ移行することができます。

GIGAスクール構想のデメリット/問題点

このGIGAスクール構想にはメリットだけでなく、デメリットや問題点も多く存在します。ここでは、その中から主なものを5つ紹介します。

 

保護者への説明や対応が必要になる

端末を配布することで、生徒は自宅でも学習や課題に取り組むことができます。しかし、これには保護者への説明や対応が必要になります。例えば、端末の管理や使用方法、インターネット利用規約などを保護者に理解してもらう必要がありま

また、端末を使った学習や課題に対して、保護者がどのように関わるべきかも明確にしなければなりません。さらに、端末が故障した場合や紛失した場合などのトラブルへの対処も保護者と連携する必要があります。これらのことは、学校側だけでなく保護者側にも負担や責任を増やす可能性があります。

 

ICT教育など教員側の取り組みや理解も必要とされる

GIGAスクール構想を実現するためには、教員側のICT教育に関する取り組みや理解が必要とされます。生徒に端末を配布するだけでは、ICTを活用した学習や課題の効果は期待できません。

教員は、ICTを活用した授業や評価方法の開発や実践、ICT教育のカリキュラムや指導法の学習、ICTを活用した学習や課題に対するフィードバックや支援の方法の確立、ICTを活用した学習や課題における生徒の成果や進度の管理など、さまざまなことに取り組む必要があります

これらのことは、教員にとってスキルや知識の向上だけでなく、時間や労力の負担も大きいことになります。

 

教員側のリテラシー次第では授業や作業が非効率になる

GIGAスクール構想では、全ての生徒に端末を配布し、ICTを活用した授業や作業を推進します。しかし、教員側のリテラシーが不十分だと、ICTを活用した授業や作業が非効率になる恐れがあります。具体的には、以下のような問題が考えられます。

  •  端末の操作や設定に慣れていないと、授業や作業の時間を無駄に消費してしまう。
  •  ICTを活用した授業や作業が目的化してしまい、ICTの使い方に集中しすぎて本質的な学習内容に気づかなくなる。
  •  ICTを活用した授業や作業が必ずしも生徒の学習効果を向上させるとは限らない。

これらの問題は、教員側のリテラシーが高まらないと、ICTを活用した授業や作業が生徒の学習にとってマイナスに働く可能性があります。

 

機器導入・整備後の対応が重要であり、コストや時間がかかる

GIGAスクール構想では、学校にICT機器を配布することで、教育の質を向上させることを目指しています。しかし、ICT機器を導入するだけではなく、その後のメンテナンスや管理(保守)も必要です。これには、多くの費用や労力がかかります。たとえば、ICT機器は壊れたり古くなったりする可能性があります。その場合、修理や交換をする必要があります。

また、ICT機器はインターネットに接続されているため、ウイルスやハッキングなどの危険にさらされています。そのため、セキュリティ対策をしっかりと行う必要があります。さらに、ICT機器はネットワークやサーバーと連携して動作します。そのため、ネットワークやサーバーの設定や管理も適切に行う必要があります。これらのことは、学校にとって大きな負担になります。学校は予算や人材や時間などの限られた資源を使って、ICT機器の運用を続けなければなりません。

 

生徒側のITリテラシーや情報モラルも十分に教育する必要がある

まず、ITリテラシーとは、情報技術を使って情報を収集、分析、発信する能力のことです。情報社会では、ITリテラシーが必要不可欠なスキルとなっています。しかし、ITリテラシーを身につけるには、単にデバイスの操作方法を覚えるだけでは不十分です。情報の信頼性や価値を判断したり、自分の考えや意見を論理的に伝えたりすることも重要です。そのため、生徒にITリテラシーを教育するには、情報教育やメディア教育などのカリキュラムが必要です。

次に、情報モラルとは、情報技術を使う際に守るべき倫理やルールのことです。情報モラルが欠けると、プライバシーの侵害や著作権の侵害などの違法行為や、ネットいじめやフェイクニュースなどの不適切な行為が起こります。これらの行為は、自分や他人に大きな被害やトラブルをもたらす可能性があります。そのため、生徒に情報モラルを教育するには、法律や社会規範に関する知識や、自己責任や他者尊重の意識を育むことが必要です。

 

以上のように、GIGAスクール構想では、生徒側のITリテラシーや情報モラルも十分に教育する必要があると言えます。これらの教育は、生徒が情報技術を安全かつ有効に活用できるようにするために不可欠です。

GIGAスクール構想の現状と今後の課題

GIGAスクール構想の現状を普及率や浸透率などの観点から解説すると、以下のようなデータが参考になります。

– 文部科学省が2021年3月に発表した「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の進捗状況について」では、全自治体等(1,813)のうち**1,769自治体等(97.6%)**が令和2年度内(2021年3月末)までに児童生徒1人1台の端末納品を完了する見込みとしています。また、全国約3万校ある公立小中学校等においては、**約2万9千校(97.0%)**が令和2年度内に端末納品を完了する見込みとしています。

– 富士ソフトが2020年12月に実施した「GIGAスクール構想アンケート調査」では、全国47都道府県教育委員会から回答を得たうち**40都道府県(85.1%)**が令和2年度内に端末納品を完了する見込みと回答しています。また、端末納品後に実施する予定の教員研修や児童生徒への指導方法などについては、**26都道府県(55.3%)**が「未定」または「未回答」としており、利活用への準備が遅れていることが分かります。

 

以上のデータから、GIGAスクール構想の現状は、端末の整備に関しては高い普及率を達成しているものの、端末の浸透や活用に関してはまだ課題が多いと言えます。教員や児童生徒が端末を使いこなせるようにするためには、研修や指導方法の充実、教材やコンテンツの開発、ネットワークやセキュリティの強化など、さまざまな取り組みが必要です。

まとめ

GIGAスクール構想は、一人ひとりの習熟度に合わせた授業の実現や、プログラミングのノウハウやITの知識の習得、教員の業務負担の削減など、多くのメリットをもたらします。また、一斉学習から個人に最適化された学習環境への移行も可能となります。

しかし、保護者への説明や対応、教員側のICT教育への理解と取り組み、機器導入後の対応など、多くの課題も存在します。さらに、生徒側のITリテラシーや情報モラルの教育も重要となります。これらの課題を解決し、GIGAスクール構想がより効果的に機能するためには、教育現場のさらなるICT化と、それに伴う教育体制の改革が求められます。

この記事の著者

ミライタッチ編集部

ミライタッチ編集部

ミライタッチは、1931年創業の“社会貢献事業”会社であるさつき株式会社が開発。皆の夢を叶えて、豊かな未来の創造のお手伝いをすることが、私たちの使命です。コラムでは、電子黒板に関する情報や、教育現場で働く方々に向けた情報発信を行なっています。