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2026.09.17 ICT教育

保育ICTとは?4機能・加算・導入事例をまとめて解説|見落とされがちな「もう一つの領域」

保育現場のICT化は、すでに例外的な取り組みではありません。
こども家庭庁の調査によると、
保育ICTの4機能のいずれかを導入している施設は84.6%
ほとんどの園が、何らかの形でデジタル化に着手しています。

ところが同じ調査で、4機能すべてを活用している施設は13.4%にとどまります。※1

この差が示しているのは、「導入したが、活用しきれていない」園が数多く存在するという事実です。そして令和8年度からは、活用し続けている園を継続的に評価する加算制度が始まりました。「入れたかどうか」ではなく「使えているかどうか」が問われる段階に入っています。

本記事では、保育ICTの基本と制度の全体像を整理したうえで、活用が定着する園としない園を分けている要因、そしていま「保育ICT」という言葉からこぼれ落ちている領域について解説します。

この記事でわかること

保育ICTの定義と、制度が定める4つの機能

  • 令和8年度に新設された保育ICT推進加算の要件と金額
  • 導入率84.6%・4機能すべては13.4%というギャップが生まれる理由
  • 制度の対象外にある、園の負担が残り続けている領域

保育ICTとは

ICTとは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略です。
保育ICTとは、こうした情報通信技術を保育現場の業務に活用する取り組み全般を指します。

対象となる業務は多岐にわたります。

  • 登降園の記録・管理(タブレットやICカード、QRコード、顔認証による打刻)
  • 保護者との連絡(欠席連絡・お知らせの配信・連絡帳のアプリ化)
  • 保育記録・指導計画の作成(システム上での入力・保存)
  • 保育料の集金・キャッシュレス決済
  • 職員のシフト管理・勤怠管理
  • 午睡チェック・バス乗降確認などの安全管理
  • 会議や研修での資料共有・大画面投影

いずれも共通しているのは、手書きや紙の書類によるアナログ作業を減らし、保育士が子どもと向き合う時間を確保するという目的です。

 

制度が定める「4つの機能」

保育ICTを語るうえで押さえておきたいのが、国が基準として示している次の4機能です。※2

機能

具体的な内容

登降園管理

ICカード・QRコード・顔認証などによる打刻と自動集計

保護者との連絡

アプリによる一斉配信、欠席・遅刻連絡の受付

保育の計画・記録のデジタル化

指導計画・保育日誌・要録のシステム上での作成・保存

キャッシュレス決済

保育料や実費徴収の集金業務

後述する加算制度は、この4機能を軸に設計されています。「保育ICT」という言葉が制度上どこを指しているのかを把握しておくことが、園としての判断の出発点になります。

 

保育ICTの導入が進む3つの背景

① 国が「導入率100%」を目標に掲げている

こども家庭庁は、保育DXの推進にあたりR7年度中に保育ICT導入率100%を目指すという政府方針を踏まえて環境整備を進めるとしています。※3

さらに、保育業務施設管理プラットフォームおよび保活情報連携基盤の試行運用が令和7年度末に開始され、令和8年度以降は全国展開が予定されています。園と自治体をつなぐ仕組みそのものがデジタル前提に切り替わっていくため、園側の対応は「するかどうか」ではなく「いつするか」の問題になりつつあります。

② 令和8年度から「保育ICT推進加算」が新設された

令和8年度(2026年度)から、保育ICTの活用を評価する加算が新設されました。※2

加算額

  • 幼稚園・保育所・認定こども園:年間30万円
  • 地域型保育事業:年間18万円

主な算定要件

  1. ICT活用責任者の配置(兼務可・特別な資格は不要)
  2. 前述の4つのICT機能の活用
  3. 国のプラットフォームへの対応
  4. 「ここdeサーチ」情報の毎年9月末までの更新


補助金のような単年度の支援ではなく、要件を満たし続ける限り
毎年継続して運営費に加算されるが特徴です。裏を返せば、「導入すること」ではなく「活用し続けること」が評価される制度設計になったということです。

〔補足:本加算は令和8年4月時点の資料では「保育ICT推進加算(仮称)」表記。最新の名称・要件は自治体にご確認ください〕

③ 人材確保の観点

業務負担の軽減は、採用にも直結します。前掲の調査によれば、ICTの4機能すべてを導入している施設では、業務負担が軽減されたとの回答が31.6%(未導入施設は17.8%)、45分以上の休憩を取得できている割合が38.8%(同31.1%)と、明確な差が出ています。※1

働きやすさが可視化される時代において、ICTへの取り組みは「園を選んでもらう理由」の一つになりつつあります。

 

導入率84.6%、4機能すべては13.4%——なぜギャップが生まれるのか

冒頭で触れた数字を、あらためて確認します。※1

  • 4機能のいずれかを導入している施設:84.6%
  • 4機能すべてを導入している施設:13.4%

「一部は使っているが、まだアナログが残っている」というのが、多くの園の実態です。

は、なぜ導入したICTが活用されないのか。こども家庭庁が令和8年3月に公表した「保育ICT導入・活用実践事例集」には、現場から寄せられた声として次のような課題が挙げられています。※4

  1. 目的が共有されていない
    「活用できていない、何のためにどこまで活用すればよいかわからない」——導入がゴールになってしまい、何をどこまで変えるのかが定まっていないケースです。
  2. 属人化している
    「熱心な人が異動してしまったので活用できなくなってしまった」——特定の職員の熱意に依存した運用は、その職員がいなくなった時点で止まります。
  3. 紙の業務をそのままデジタルに置き換えている
    様式も手順もそのままに、記入媒体だけを紙から画面に変えても、作業量は減りません。むしろ操作の手間が上乗せされることさえあります。
  4. 現場が「仕事が増えた」と受け止めている
    「忙しいのに余計な仕事を増やされた」という反発は、上記1〜3の結果として生じます。


いずれも、ツールの性能ではなく
導入の進め方に起因する課題である点が共通しています。加算制度が「活用し続けること」を要件にしたのも、こうした実態を踏まえたものと考えられます。

 

4機能ごとの活用事例

制度が定める4機能に沿って、実際の活用イメージを整理します。

① 登降園管理

タブレットやICカードによる打刻システムに切り替えることで、出欠の手書き記録と月末の集計作業がなくなります。
登降園データはシステムが自動で管理するため、記入漏れや転記ミスの確認にかけていた時間も削減できます。

ある保育施設では、ICTの導入により、園児の登降園打刻データが出席簿や延長保育利用一覧に自動で連動されるようになり、月末の集計業務が削減されたとの報告がなされています。※5 

② 保護者との連絡

紙の連絡帳をアプリに切り替えることで、手書きの時間を削減できます。お知らせの一斉送信や欠席・遅刻の受付もアプリで完結するため、朝の時間帯に集中していた電話対応も減らせます。

副次的な効果として、保護者との関係づくりを挙げる園もあります。写真付きのおたよりを配信したところ、それまで送迎時の連絡事項の伝達にとどまっていた保護者との会話が、「昨日の写真を見て……」と広がるようになったという事例が報告されています。※6

③ 保育の計画・記録のデジタル化

前掲の調査で負担感の上位を占めているのが、指導計画(50.8%)と保育記録(49.4%)の作成です。※1

これらをシステム上で作成・保存する形にすると、過去の記録の検索・参照が容易になり、テンプレートの活用や園児情報の自動反映によって転記作業も減らせます。近年は、記録内容をもとに要録の所見欄の文章案を生成AIが提案するサービスも登場しており、手書きでは難しかった修正・見直しが可能になった、という声も出ています。※7

④ キャッシュレス決済

保育料や実費徴収を口座振替・キャッシュレスに切り替えることで、現金の取り扱いと集計、袋詰めや督促といった業務がなくなります。4機能のなかでは導入判断が比較的しやすい一方、保護者側の理解と手続きが必要なため、切り替え時期の設計が重要になります。

 

見落とされがちな「もう一つの領域」

ここまで見てきた4機能には、ひとつの共通点があります。
いずれも事務・バックオフィス業務であるという点です。

実際、前述のこども家庭庁「保育ICT導入・活用実践事例集」で扱われている取り組みを確認すると、登降園管理、連絡帳、保育記録、指導計画、請求管理、キャッシュレス決済、午睡チェック、バス乗降確認、職員間チャット、写真の自動分類——と、そのほとんどが職員室で完結する業務です。※4


一方で、次のような領域は、保育ICT推進加算の対象外です。 

  • 教材・掲示物の作成:行事のプログラム、リトミックの楽譜、朝の会の絵カード、季節の掲示物。毎年ほぼ同じものを、毎年つくり直している園は少なくありません
  • 保育活動そのもの:絵本の読み聞かせ、製作活動の手本提示、季節の自然観察など、子どもの前で使うICT
  • 職員会議・園内研修の運営効率化:資料の印刷・配布の削減、議事録作成の効率化など 


これらは制度上、業務負担軽減の指標として測りにくい領域です。そのため政策の焦点にはなりにくい。しかし現場の負担としては、確実に存在し続けています。 

事例:教材づくりの負担を減らした園

広島県のてまりこども園では、リトミックの楽譜をはじめとする教材を職員が毎回手作りしていました。電子黒板「ミライタッチ」を導入したことで教材作成の負担が軽減され、その結果、先生が子どもたちと向き合う時間が増えています。職員からは「本当にラクになりました」という声が上がっています。※8

〔【動画】https://youtu.be/pUNAeYywOcE /ミライタッチを活用したてまりこども園の保育の様子〕

保育ICTシステムと大型ディスプレイは、競合する投資ではありません。カバーする領域が異なるというだけです。加算制度を活用してシステム領域のコストを抑えながら、加算では埋まらない領域に別の手を打つ——園全体の負担を見渡すなら、この二軸で考えるのが実態に即しています。

 

活用が定着する園がやっていること

前述の4つの課題は、そのまま裏返せば実践のポイントになります。

  1. 目的を「何の時間を、どれだけ減らすか」で定義する

「ICT化する」ではなく、「指導計画の作成時間を半分にする」「朝の電話対応をゼロにする」と具体化します。目的が数字で置かれていれば、活用できているかどうかを職員全員が判断できます。

  1. 旗振り役を決め、属人化させない

ICT活用責任者の配置は加算の要件でもあります。制度対応と定着施策を兼ねられるため、担当者を明確にし、操作手順を園の資産として残しておくことが有効です。

  1. 紙の様式をそのまま移さない

デジタル化のタイミングは、その書類が本当に必要かを見直す機会でもあります。様式を保ったまま媒体だけ変えると、作業量は減りません。

  1. 最初の一つは「効果がすぐ分かる業務」を選ぶ

複数の機能を同時に導入すると、現場は負荷だけを実感します。負担が大きく、かつ効果が短期間で見える業務から始めることで、「ICTは楽になる」という経験が先に共有されます。

 

まとめ

保育ICTとは、情報通信技術を活用して保育現場の業務を効率化する取り組みです。国の政策と加算制度により、導入を後押しする環境は整いました。

  • 制度が定める4機能は、登降園管理・保護者連絡・計画記録のデジタル化・キャッシュレス決済
  • 令和8年度から保育ICT推進加算が新設され、「活用し続けること」が評価される段階に入った
  • 導入率84.6%に対し4機能すべては13.4%。ギャップの原因はツールではなく導入の進め方にある
  • 4機能はいずれも事務業務。教材づくり・保育活動・会議研修は制度の外側に残っている


園全体の負担を減らすには、制度が示す範囲と、その外側に残る業務の両方を見る必要があります。まずは「一番手間がかかっている業務」を一つ選び、そこから始めてみてください。

〔内部リンク:具体的な進め方は「保育士の残業を減らすには?園長が取り組むべき業務効率化の進め方」で解説しています〕

〔内部リンク:保育活動・教材づくりでの活用については「幼稚園・保育園向けミライタッチをご覧ください〕

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〔内部リンク:幼稚園・保育園で電子黒板が注目される理由とは?子どもの可能性を広げる新しい保育のカタチ

【注釈・引用元】

※1 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「保育士等の意識及び業務負担軽減に関する調査研究 報告書」(こども家庭庁 令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業、令和8年3月) https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2026/04/koukai_260423_02_19.pdf
※2 こども家庭庁「令和8年度 公定価格・基準等の見直し事項」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/330bfaef/20260409_policies_kokoseido_178.pdf(ICT活用責任者の配置要件の詳細については、CoDMON「保育ICT推進加算や新たな減算が開始【こども家庭庁 R8年度予算案】」も参照
https://www.codmon.com/column/policy_briefing_6/ ) 
※3 こども家庭庁「保育DXの推進について(第9回子ども・子育て支援等分科会 資料10)」   https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c06860e-37a4-44be-96b4-7f60e4f1d8a8/997b740f/20250228_councils_shingikai_kodomo_kosodate_2c06860e_10.pdf
※4 こども家庭庁「保育ICT導入・活用実践事例集(令和7年度保育ICTラボ事業)令和8年3月」   https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/b14ddd56-d065-4f35-a2ae-2cefbee56e3f/fb201ced/20260511_policies_hoiku_hoiku-ictlabo_04.pdf
※5 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「保育分野におけるICTの導入効果及び普及促進方策に関する調査研究 報告書」(令和4年度子ども・子育て支援推進調査研究事業、令和5年3月)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/aa0e4fcc-4e05-48cf-a2a0-ff9a5f702230/635c4927/20231023_policies_kosodateshien_chousa_suishinchosar04-02_h02.pdf
※6 ルクミー 活用事例「デジタルならではの情報共有で保護者との関係を密に」   https://lookmee.jp/case/detail_33.html
※7 園支援システム+バスキャッチ 機能紹介「要録・保育計画作成」   https://www.buscatch.com/kindergarten/func/
※8 ミライタッチ 導入事例「てまりこども園」   https://mirai-touch.com/case/1762/

著者

  • ミライタッチ編集部

    ミライタッチ編集部

    ミライタッチは、1931年創業の“社会貢献事業”会社であるさつき株式会社が開発。皆の夢を叶えて、豊かな未来の創造のお手伝いをすることが、私たちの使命です。コラムでは、電子黒板に関する情報や、教育現場で働く方々に向けた情報発信を行なっています。