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CASE STUDY

ミライタッチは説明装置ではなく、“思考の記録装置”としての黒板。子どもたちの学びは途切れることなく、続いていく。

ヒロック初等部

導入機器

65インチ液晶ディスプレイ一体型 電子黒板 M65CE2S

お話を伺った方

ヒロック初等部 グループカリキュラムディレクター 代々木校スクールディレクター

五木田 洋平(ごきた・ようへい)様

ヒロック初等部では、子どもが主役となって「育ち」や「学び」を主体的に勝ち取る、子どもの福利(いわゆるウェルビーイング)を広げていく学校を目指されており、最適な教育ICT機器を探されていた。
電子黒板「ミライタッチ」を導入することで、電子黒板でWebに繋げられたり、子どもたちが持つiPadと連携してリアルタイムに同時で書き込めたり、目指していた授業ができるように。その中でも一番大きな利点は、電子黒板に書いた言葉や授業内容をずっと記録できる点だった。
子どもたちの意見を可視化するときに、とても役立っている。ミライタッチは書いた内容をずっと保存できることから、従来の黒板のように説明するためだけの装置ではなく、子どもたちの思考の記憶装置になる。 たとえば以前に黒板に書いた言葉を、「こんなこと言ってたよね」と引き返せることで、子どもたちの「そうだった!」という生の反応を引き出すことが可能に。学びが授業ごとに遮断されることなく、地続きで繋がっていくことは、効果が高いと感じている。

文部科学省が定めている学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学びによって、子どもたちが自分で未来・社会を切り開いていくための資質・能力を育んでいくこと」を重要な指針として位置づけています。しかしながら、昔は無かった教育方針だけに、教育関係職員にとってどのような教育をしていくかは課題の1つでもあると言えます。

2022年4月に東京・世田谷区の砧公園にほど近い場所に開校したのがオルタナティブスクール「ヒロック初等部」。子どもが主役となって「育ち」や「学び」を主体的に勝ち取る、子どもの福利(ウェルビーイング)を広げていく学校を日々目指しています。

ヒロックには固定席がなく、教科別授業もありません。基本は自由進度学習であり、今日どんな学習をするのかはすべて子どもたちが決めます。壁際のデスクで集中している子もいれば、ソファーで仲良しの子と身を寄せ合って座る子、寝転がってパソコンを操作する子、数人でテーブルを囲む子と学ぶスタイルは様々。その様子は、従来の学校という固定観念を覆します。

「子どもたちが望まない競争はいっさいしない」「子どもたちの福利(幸福と利益)を拡張する」。そんな理念を掲げるヒロック初等部では、どのように「主体的・対話的で深い学び」を実践されているのでしょうか。23年9月に開校する代々木校のスクールディレクター 五木田氏に、ミライタッチ導入理由と導入後の変化、今後実現したいことをお聞きしました。

目指すのは、さまざまな学びの場を子どもたちに与えられる社会。

五木田洋平 氏

<プロフィール>

私立小学校で10年間勤務。その後、都内でプリスクールを運営してきた堺谷武志 氏、14年間公立小で個に寄り添う学びを追究してきた蓑手章吾 氏と共に、2021年3月に東京都世田谷にオルタナティブスクール「ヒロック初等部」を創設し、22年4月に開校する。子どもが主体的に「育ち」や「学び」を勝ち取っていくことで、自らウェルビーイングを広げていく学校を目指している。2023年9月にヒロック初等部代々木校を開校。カリキュラムディレクターとしてヒロック初等部全体のカリキュラムづくりをリードすると共に代々木校での校長を務める。著書として、『ICT主任の仕事術 仕事を最適化し、学びを深めるコツ』(明治図書)を刊行している。

オルタナティブスクール「ヒロック初等部」について、教えてください。

ヒロックは2022年4月に、東京・世田谷区の砧公園に近い場所に開校したオルタナティブスクールです。オルタナティブスクールとは、アメリカやヨーロッパの哲学的思想を取り入れたオルタナティブ教育を実施する学校のことを指し、オルタナティブ(Alternative)は「主流の代替となるもの、慣習的方法をとらない」という意味です。 公立・私立の学校に代わる選択肢として、日本国内でも数多く存在しています。

一条校(学校教育法第1条が規定する小学校)ではないため、地元の公立小に学籍を置いて通う子どもがほとんどで、中には籍を置く一条校に定期的に通う子もいます。1クラスにつき、約20名の生徒(小学1年生〜3年生)が在籍しており、2名の先生で一人ひとりの子どもに寄り添っています。自然の中でワイルドに遊び、「探求」×「教科」でアカデミックに学び、東京という立地を生かして社会につながり、子どもたち一人ひとりの福利を広げることを目指しています。

ヒロックでは、特にどのようなことを大事にされていますか?

「福利の拡張」という言葉を大事にしています。子どもたちの福利を未来に向けて拡張させていくのが、私たちの役目でもあるのです。世の中にはいろんな学校がありますが、ただ楽しいだけではなく、自分たちの意志や主張を発揮して、自由や幸福を獲得することを子どもたちには学んでほしいのです。

ヒロックには基本的にルールが無いのですが、制度が1つだけあります。それが「どうしても制度」です。誰かが「どうしても!」と言えば、それを聞き入れてもらえるようにしています。

日本では「民主主義=多数決」と誤解されていることが多いように感じます。多数決は1つの方法ではありますが、便利な方法のため、すべての判断事項が多数決で決められてしまいがちです。ですが、マイノリティの意見が届きにくかったり、強い人の意見に左右されたり、「なんとなく大勢の人が言っていたから…」の総意に引っ張られてしまったりすることも。理にかなっているかどうかでは決まっていないんですね。

ヒロックでは「今日はどうしても休みたい」「どうしてもドッチボールをやりたい」といった自分の意志を表明することのほうが大事だとしています。子供たち一人ひとりが「どうしても」を言い続けることで、たとえばAさんの「どうしても」とBさんの「どうしても」がぶつかることもある。そんな時に必要なのが対話なんです。そこで、じゃんけんをしていたら全く意味がない。話し合うことで、答えを出す。それも「福利の拡張」の一環であります。

主張があるというのは、自分の人生を選択をしているということです。その選択が成功するかどうかは置いといて、正解にするような努力をしたり、失敗だと思ったら訂正したり、謙虚になったり、別の道を探したり。そんな体験を多くすることは、子どもたちにとって主体的・対話的な学びになります。

ミライタッチを導入することで、学びが途切れずに続いていく。

ミライタッチの導入理由と、導入されて良かったことを教えてください。

導入理由ですが、ヒロック1校目を開校する際に教室の広さの関係もあり、プロジェクターを天井から吊るす場所や投影用のスクリーンやホワイトボードを設ける場所がなかったんですね。そこで電子黒板を検討したのですが、安全性と耐震性にも優れているとのことでミライタッチを導入しました。でも、電子黒板に対して、最初は懐疑的だったんです(笑)。

以前に勤めていた学校ではプロジェクターを使っていたのですが、ホワイトボードとプロジェクターの2画面で授業を展開したほうが、映像スペースと書くスペースで分けられるし、その方が思考が深まるのではないかと思っていました。しかしミライタッチを使ってみて、その先入観はすぐに消えました(笑)。進化のレベルが凄かったのです。

以前の電子黒板であれば、ペンの書き心地がとても悪く、書いたものが表示されるのにタイムラグが少しあり、気持ち悪かったんですね。でもミライタッチはタイムラグが一切なく、普通のチョークと同じように使用できます。書き心地がとても良いのです。そして何よりも、子どもたちが自由にミライタッチを使って遊べるのがいいですね。画面に自由にイラストを書いたり、思いついたアイデアを書き留めたり、みんなの意見をまとめたり、表現の場が格段に広がりました。

ミライタッチを使ってみて、新たに発見されたことはございますか。

ミライタッチでWebに繋げられたり、子どもたちが持つiPadと連携してリアルタイムに同時で書き込めたり、利点はたくさんありますが、一番大きな利点は、電子黒板に書いた言葉や授業内容をずっと記録できることですね。

学校の授業は45分間で1ユニットという決まった時間割で進んでいきますが、ミライタッチに記録した前回の内容を振り返ることで、45分間で分断されるのではなく学習が続いていく感覚が持てるのです。これは大きな発見だと思いました。たとえば、昨日黒板に書いた言葉を、翌日に「こんなこと言ってたよね」と引き返せるのは、「そうだった!」という子どもたちの生の反応を引き出すのに役立ちます。そんなふうに、学びが授業ごとに遮断されることなく、地続きで繋がっていくことは、本当に効果が高いと感じています。ミライタッチは、決して黒板をデジタル機器にしただけではない。プロジェクターでは絶対にできないことだと思います。

一般的な学校の先生は、1回の授業で45分の持ち時間が最長です。しかし、子どもたちの学びは365日ずっと続いていくべきものなので、45分間で学びの時間が切れるのは大人が決めたカリキュラム上の問題でしかないのです。本来であれば、学びの時間が切れずにどんどんと続いていくことが大事であり、それが理想なんです。ミライタッチであれば、それが可能になります。

黒板が説明装置ではなく、思考の記憶装置になる。

ヒロックならではの『ミライタッチ』の使い方を教えてください。

子どもたちの意見を可視化するときに、とても役立っています。ミライタッチは書いた内容をずっと保存できることから、従来の黒板のように説明するためだけの装置ではなく、子どもたちの思考の記憶装置になるのです。

たとえば、子どもたち全員で「水かけ遊び」をしたときの話です。公園で水鉄砲を持って水をかけ合うゲームなんですが、水をかけたい子がいれば、水にかかりたくない子もいたり、中には水をかけたいけど自分はかかりたくない子と様々。子どもたち自身で「この線から向こうは水をかけてOK。こっちから先は水かけ禁止」などのルールを作って遊んでいたんですね。でも、水にかかりたくないという子たちに水がかかってしまったのです。なんで、水がかかってしまったのか。それが起こった理由は何か?それを問題点にして、みんなで議論をしました。

昔ながらの学校の授業であれば、先生が間に入って「水かけ遊びのルールを聞いていなかった子たちがいるから、そのようなことが起こった。ルールは守りましょう!」ということで終わってしまうかもしれません。しかしヒロックでは、私たち先生はあくまでもファシリテーターの役目。子どもたち一人ひとりに考えてもらって、答えを見つけるようにしてもらっています。その際の意見をまとめて可視化するのに、ミライタッチがとても役立っています。

子供たちが各自のiPadに書いた意見をミライタッチ上で集約して、内容によって分類分けを行い、「この中で一番解決すべき問題は何か?」を子どもたちに意見してもらい、「明日同じことが起こらないようにするにはどうしたらいいのか?」を議論してもらっています。そして翌日の水かけ遊びで「昨日と同じことが起こったのかどうか」を再確認する際にも、ミライタッチに記録した昨日の議論内容が役立つのです。子どもたちも「確かに昨日言ってたことを守ったら、問題は解決された!」と納得した顔になります。

議論の中では、小学校2年生〜3年生が「それは全体の問題?」「局地的な問題?」といった大人の社会で使いそうな言葉を使うことも。全体や局地というのは概念の話ではありますが、それを水かけ遊びという具体的な体験をすることで、理解できるようになります。自分たちの体験や言葉が、成長にはすごく大事なのです。これは、ヒロックが目指す「子どもたちの新しい学び」の仕組みの1つでもあります。

今後どのように『ミライタッチ』を使っていきたいですか。

ミライタッチを使い始めて1年程が経ちますが、まだ一部の機能しか使えていません。ヒロックでは子どもたちが自由にミライタッチを使っていますので、彼ら彼女らが私たちもまだ知らないような新しい機能を発掘してくれたら嬉しいなと思っています。「こんなことができるじゃん」「この機能があれば、私たちの困っていることが解決できる」など、新しい発見を私たち先生に教えてくれるような環境になっていけば嬉しいです。歳上だから知識があるという前提ではなく、「チャレンジしている」「遊び心がある」「ユニークな発想をする」そんな子たちが自分の個性を伸ばせるような環境が当たり前になってほしいのです。ちょっとしたイタズラ心や遊び心が、日々を拡張してくれるのは間違いありません。ミライタッチは非常に頑丈で壊れにくいので、子ども達の探究心にも耐えられる。その点も非常に信頼できる製品だと言えます。

私たちヒロックはまだ2年目の若いスクールですが、1校目の世田谷校では子どもたちの成長やスクールの文化のあり方に大きな手応えを感じています。大変ありがたいことに「ウチの子もヒロックに!」「ウチの近くにもあればいいのに」という声をたくさんいただいており、2023年の9月に代々木校をオープンすることになりました。子どもたちに対して、福利の拡張をするためにチャレンジすることを求めている以上、自分たちも「学びの選択肢を広げるためにチャレンジしつづける存在」でありたいのです。今後の私たちに是非ご注目ください!