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CASE STUDY

離島の教育格差を解決する、遠隔授業の取り組み。ミライタッチと周辺機器の活用で、学びの可能性は拡大する

島根県教育委員会

導入機器

「ミライタッチ + 日本HP 特別パッケージ」

●ミライタッチChromeOS Flex 搭載モデル

●オールインワンのビデオ会議ソリューション「Poly Studio X52」

お話を伺った方

島根県教育委員会 教育連携推進課 教育DX推進室 指導主事

堤 裕亮 様

島根県立島根中央高等学校

水上 直美 先生、小松原 研 先生、和田 千遼 先生

島根県立矢上高等学校

佐々葉 裕久 先生

島根県立隠岐島前高等学校

森田 悟史 先生

島根県には中山間地域・離島の高校が多く、生徒が少ないため配置される教員数が限られている。そのため、生徒の学習ニーズに合った多様な科目が開講されなかったり、生徒の進度に合わせた習熟度別の授業ができなかったりするなどの課題があった。そこで、Web会議システムを使ったリモート授業の配信テストを実施した。 しかし、カメラやモニター、マイク、スピーカーなどが汎用的な機器の組み合わせということもあり、画質や音質が安定せずに途切れたり、乱れたりすることも。特に板書が不鮮明になるケースや先生の声が途切れるようなケースでは、授業を受けている生徒の集中力が切れてしまうことも多かった。
電子黒板「ミライタッチ ChromeOS Flex 搭載モデル」と、マイク、カメラ、スピーカー、Zoomのアプリケーションが一体になった、オールインワンのビデオ会議ソリューション「Poly Studio X52」を導入した。
従来の環境にあった課題は完全に払しょくされ、リモート授業の配信は安定した運用環境に。電子黒板も直感的に操作できることにより、現場の教員の心理的なハードルを下げることができた。教室全体をクリアに映し出すカメラや、教室後方の生徒の声も拾ってくれる高性能マイクも学習効果を高めている。

中山間地域・離島の高校では、地理的制約や少子化・過疎化の影響により、生徒数も少なく、配置される教員数も限られています。そのため、生徒の学習ニーズに合った多様な科目が開講されなかったり、生徒の進度に合わせた習熟度別の授業ができなかったりするなど、所謂 ”教育機会の地域格差”が課題となっています。

この課題を解決するために、ICT(情報通信技術)を活用した遠隔授業やオンラインでの合同授業などの取り組みが全国的に進められています。島根県教育委員会でも専門教員による遠隔授業の取り組みを2025年から始めました。

県内の複数の高校に配信デバイスを設置して、リモート授業を行っているのですが、そこで活躍しているのが、電子黒板「ミライタッチ ChromeOS Flex 搭載モデル」と、マイク、カメラ、スピーカー、Zoomのアプリケーションが一体になった、オールインワンのビデオ会議ソリューション「Poly Studio X52」です。

どのように製品が活かされているのか、話を伺いました。

リモート授業の品質向上を目指して「ミライタッチ」を導入

島根県教育委員会 教育連携推進課 教育DX推進室 指導主事 堤 裕亮 様

島根県が目指す「ICTを活用した授業」について教えてください。

生徒が与えられたデジタル端末を日常的に活用し、様々なアプリやコミュニケーションツールなどを駆使しながら、学習する力を高めることを目指しています。

その実現のためにはICTを効果的に使った授業づくりを推進する必要があります。島根県には中山間地域・離島の高校が多く、生徒が少ないため配置される教員数が限られ、生徒の学習ニーズに合った多様な科目が開講されなかったり、生徒の進度に合わせた習熟度別の授業ができなかったりするなどの課題がありました。こうした中で、Web会議システムを使ったリモート授業の配信テストを実施してみることにしたのです。

令和5年から施行されている「COREハイスクール・ネットワーク構想」に島根県が参加したことや、「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」の取り組みを始める学校が増えてきたことも、リモート授業の取り組みを強化するきっかけになりました。

リモート授業の取り組みをする中で、どんな問題が発生しましたか。

授業を配信しようとする度に、カメラやモニター、マイク、スピーカーなどをスイッチャーやオーディオインターフェイスに繋げる作業や接続確認などが必要となり、これが関係者にとっては大きな負担になることが分かりました。配信中も、カメラの向きやズーム、マイク調整といった微調整に教員が気を取られてしまい、授業や生徒の反応に集中しにくい状況が発生してしまいます。

また、汎用的な機器の組み合わせでリモート授業をやっていたこともあり、画質や音質が安定せずに途切れたり、乱れたりすることもありました。板書が不鮮明になるケースや先生の声が途切れるようなケースでは、生徒の集中力が切れてしまうことも多かったです。

そのような問題を解決するために、ミライタッチを導入されたのですね。

専門的な知識を持たない教員にとって、これらの問題を自力で解決することは難しく、抜本的なシステムの見直しが必要だと考えました。その時に思い出したのが、以前に教育関連のイベントで見かけた「マイク、カメラ、スピーカーそしてZoomのアプリケーションまでもが一体になった、HP社のPolyビデオバー」です。HP製品と相性の良い電子黒板「ミライタッチ」とセットにしたシステムを、複数の候補の中から入札により選定しました。

本体とタッチパネルのみで運用できる簡便性の高さが導入のポイントでしたね。直感的に操作できることにより、現場の教員の心理的なハードルを下げることができると考えました。教室全体をクリアに映し出すカメラや、教室後方の生徒の声も拾ってくれる高性能マイクも学習効果を高めてくれると期待しました。

電子黒板「ミライタッチ」とHP社の「Poly Studio X52」を中心に、Webカメラや「Poly Studio E60」によるスポット撮影も可能にする配信システム

理想のリモート授業を実現。確かな手応えがある

「ミライタッチ」と周辺機器の導入後、どんな変化がありましたか?

従来の環境にあった課題は完全に払拭されて、リモート授業の配信は安定した運用ができています。配信側としては、事前の準備や授業内容に合わせたカメラワークなども、先生方が自在にできるようになった点で高い評価をいただいています。以前は、板書が見えない、生徒の表情が見えない、声が聞こえないといった状況だったものが、今ではクリアにコミュニケーションができるように。大きな前進ですね。

運用環境は問題なく改善されましたので、今後は、配信する教員のリモート授業に対する指導技術の向上が求められます。カメラの向こうにいる生徒の反応を掴み、飽きさせない授業を展開するスキルや、オンラインでのグループワークを効果的にファシリテートするスキルなど、より良い授業のために実現すべきことは、まだ沢山あります。

今後さらなるICT活用・普及に向けて、どんなことに取り組まれますか。

今後の普及へ向けて、デジタル教材やコンテンツの作成・活用に関するノウハウの蓄積など、品質向上へ向けた取り組みも重要になってきます。生徒一人ひとりの要望に応じられる配信を用意し、彼らにより良い選択肢を与えてあげられることが理想だと考えます。

また、もうひとつの可能性として、不登校の生徒への対応にも活用していけるはずなので、その研究も始めています。すべてをすぐに取り入れるということではありませんが、各学校とも連携しながら、無理なくリモート授業の活用範囲を広げていきたいと考えています。

島根大学名誉教授 平川正人氏によるリモート授業の模様

リモート授業の試験配信を受信している、各校の意見① 

生徒の進路に合わせた授業を行う“選択肢の一つ”として有効

島根県立島根中央高等学校 水上 直美 先生、小松原 研 先生、和田 千遼 先生

「ミライタッチ」を導入して、リモート授業を行なった感想を聞かせてください。

リモート授業に興味を持つ生徒は多数いますが、今回は習熟度が高い2名に絞り、彼らのニーズに合わせた授業を選択しました。最初は戸惑いもあったようですが、今ではすっかり慣れて授業に没頭できているようです。彼らは、対面授業とリモート授業のそれぞれの良さがあると感じているようです。

私たち教員にとっても、一部の授業をリモート授業で担当してもらえることで時間が確保できる場合があります。また、今回のように習熟度別の授業を組みたい場合には有効な手段になり得ると考えています。

今後もリモート授業に関しては取り入れていく予定ですが、生徒の進路に合わせた授業を行う際の選択肢の一つとして用意していきたいと考えています。今年度のテスト配信をしっかり評価し、今後に活かしていきたいと思います。

※誌面の都合で3名の先生のご意見をひとつにまとめさせていただきました。

リモート授業の試験配信を受信している、各校の意見②

生徒から不満の声は無し。教員の負担も大きく軽減

島根県立矢上高等学校 佐々葉 裕久 先生

「ミライタッチ」を導入して、リモート授業を行なった感想を聞かせてください。

私たちの学校では「情報」を選択している生徒20名へ向けて、「情報II」をリモート授業で受けてもらっています。すでに20時間ぐらい授業を受けていますが、不満などの声は出ていません。画面もよく見えますし、配信先の先生とコミュニケーションも取れているようなので、問題なくリモート授業を受け入れているようです。

「情報I・II」はそもそも情報の教員が少ないこともあり、その一部を受け持っていただけるので実際に私たちの負担は大きく減っています。個人的にはとても助かっています。

私たちの学校では、「ICTが苦手だ」と当初はおっしゃっていたベテランの先生方も積極的に使っていこうとチャレンジをしておられます。学校DXへの理解も深く、良い雰囲気なのでリモート授業に関してもうまく活用していければよいと思っています。

リモート授業の試験配信を受信している、各校の意見③

とても品質が良く、想像していたよりも音声も映像もクリア

島根県立隠岐島前高等学校 森田 悟史 先生

「ミライタッチ」を導入して、リモート授業を行なった感想を聞かせてください。

離島にある学校ですが、光回線が通っているのでリモート授業を取り入れる環境は整っていました。今回は選択授業として「情報II」を採用しましたが、授業を選ぶ生徒は習熟度別に大きく2種類に分けることができたので、それぞれを対面授業とリモート授業に振り分けることを考えていました。

ところが、リモート授業が始まると島根大学の平川名誉教授が教鞭をとってくださっており、想定以上に生徒の学びが深まりました。そのため、結局全員でリモート授業を受けていくことにしました。情報IIはリモート授業と親和性が高いという面もあり、生徒の積極的な学びに繋がっています。

リモート授業はとても品質が良く、想像していたよりも音声も映像もクリアでまったく問題ないように感じます。ただし、リモート授業独特の「間」のようなものはありますが、お互いの慣れによって解消するような気がしています。