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導入事例 CASE STUDY
ICT環境が刻々と進化する今、教育現場にはどんな変化が起きているのか。「NEXT GIGA」で、これからどのような変革が求められるのか。

【Webセミナー「教育のミライ」開催レポート】
導入機器
MIRAITOUCH ChromeOS Flex 搭載モデル
お話を伺った方
福岡市教育委員会 指導部 教育ICT推進課長
永田 朗
鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センター DX担当部長
木田 博
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- 福岡市では、以前まで大型提示装置としてプロジェクターを活用。しかし、画面投影機能しかない不便さや、プロジェクターと黒板の設置場所が重なってしまいがちで併用しにくい点に不満が集まっていた。 鹿児島市では大型提示装置の活用があまり進んでおらず、生徒たちが自らの学習成果物などを周囲に見せて発表するようなツールや術がなかった。これにより、生徒が前に出る機会をなかなか作れていなかった。
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- 「画面を直接タッチして操作できる」「液晶のテレビとは違い、画面が割にくく安全」「画面が反射しにくいため、どの席に座っている生徒も見やすい」などの理由から、各校へのミライタッチ導入を決定。また福岡市・鹿児島市ともに、タブレット感覚で活用できるChromeOS Flex搭載モデルを採用した。
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- ミライタッチは単なる画面投影ツールではなく“巨大なChromebook”であるため、指一本でWeb検索やGoogle Meetへの接続など多彩な使い方ができるように。これにより、授業の効率性が高まった。 また、ミライタッチは生徒が持っているタブレットとの画面共有、そして共有した画面への書き込みも可能。これにより生徒が前に出て発表する機会が増え、「学んだことをアウトプットする力」や「自分の考えを表現する力」が育まれやすくなった。
2024年11月6日、電子黒板「ミライタッチ」の企画・開発を手がけるさつき株式会社が主催する無料Webセミナー「教育のミライ」が開催されました。
文部科学省が推進するGIGAスクール構想の第2段階を指すプロジェクト「NEXT GIGA」では、さらに進化したICT教育環境の整備と活用が掲げられており、児童生徒がICT端末を効果的に活用し、教員もICTを活用した指導力を高める必要があります。
また、ICTの活用が進んだことで新たに見えてきたのがセキュリティ面の課題。信頼できる「内側」と信頼できない「外側」にネットワークを分ける従来の境界防衛型ではなく、利用者ごとに情報アクセスを認証する「ゼロトラスト型のセキュリティ対策」の整備が求められています。新たな教育ネットワークの整備により、教職員の業務負担が軽減し、教職員が児童・生徒一人一人と向き合う時間が今まで以上に確保できると期待されています。
このようにICT環境が刻々と進化する今、教育現場にはどんな変化が起きているのでしょうか。また、これからどのような変革が求められるのでしょうか。第一部は「大型提示装置の今とこれから」、第二部は「Chrome OSとゼロトラスト」をテーマに、福岡市教育委員会の永田氏と鹿児島市教育委員会の木田氏に、“教育のミライ”について語っていただきました。本記事では、セミナーの様子や内容をレポートします。
【コーディネーター】
・第一部 コーディネーター:
合同会社未来教育デザイン 代表社員 平井 聡一郎
茨城県の公立小中学校、教育委員会で33年間の勤務を経て現職。茨城大学非常勤講師、経済産業省産業構造審議会臨時委員、文部科学省学校教育情報化推進専門家会議委員、総務省地域情報化アドバイザー、内閣官房デジタルの日検討委員会WG委員、他複数の自治体の教育アドバイザーを務める。
・第二部 コーディネーター:
一般社団法人教育ICT政策支援機構 代表理事 谷 正友
大手SIer、奈良市教育委員会を経て、現在、一般社団法人教育ICT政策支援機構代表理事、文科省学校DX戦略アドバイザー、文科省セキュリティポリシーガイドライン検討会委員、富山市教育DX政策監を務める。
【登壇者】※第一部・第二部ともに
福岡市教育委員会 指導部 教育ICT推進課長 永田 朗
中学校教員、福岡市教育委員会指導部学校指導課を経て令和3年4月より現職。生徒たちの1人1端末利用の促進や、教員の端末利用、教育DXを推進する役目を担う。
鹿児島市教育委員会 学校ICT推進センター DX担当部長 木田 博
小学校教員、鹿児島県総合教育センター情報教育研修係長、鹿児島市学校ICT推進センター所長等を経て、令和6年4月より現職。教育委員会や各学校におけるあらゆるDX推進を担当。
ミライタッチは「巨大なChromebook」。直感的に操作できる便利さが魅力
第一部の大テーマは「大型提示装置の今とこれから」。今や、黒板とは別にテレビやプロジェクターなどの大型提示装置を活用するのが当たり前になっている教育現場。近年は、そんな大型提示装置のリプレイスを進める自治体が増えています。
福岡市と鹿児島市が導入したのは、電子黒板「ミライタッチ」。セミナー内では、各登壇者が大型提示装置をテレビ・プロジェクターから切り替えた理由や、ミライタッチならではの特徴について語りました。
木田:
新しい大型提示装置を導入するにあたり、まずはプロジェクター型とディスプレイ型のどちらにするかから検討を始めました。選ぶ上で気にしたのは「画面の映り方」と「設置スペース」です。
まず「画面の映り方」ですが、プロジェクターは部屋を暗くした状態でなければ投影したものが見えにくいため、天気のいい日などは必ず暗幕が必要になってしまいます。また「設置スペース」に関しては、プロジェクターは本体を置くスペースを確保しなければならず、別途設置工事が必要になる可能性もあります。生徒たちの動線も考慮した結果、プロジェクターよりディスプレイ型がいいだろうという判断になりました。
次に、ディスプレイ型には「テレビか電子黒板か」という大きく2つの選択肢がありますが、主に2つの理由から電子黒板を選びました。まず1点目は「安全性」です。最近の大型テレビはほとんどが液晶画面であるため、圧力をかけたりぶつかったりすると割れてしまう恐れがあるのが懸念点でした。
2点目は、先生と生徒たちの「目線」です。電子黒板は直接画面を触って操作できるため、普通の黒板と同じように使うことができます。一方テレビはそれができず、画面に映したものを変更したり移動させる場合は、テレビにつなげている手元のタブレットを操作する必要があります。そうなると、生徒たちと先生の見ているものが違うため、目線が合いづらくなってしまいますよね。「生徒たちの顔を見ながら授業を進める」という従来の授業スタイルを維持するのは、先生方の授業のしやすさを考えても、生徒の主体性を育む上でも必須だと感じたため、鹿児島市では電子黒板を導入することにしました。
永田:
福岡市の小中学校では、令和元年〜2年にプロジェクターを導入して活用していました。初めは現場からも喜ばれていたのですが、電子教科書が普及するにつれ、徐々に「プロジェクターは画面投影の機能しかないのが不便」「画面に直接タッチできたらいいのに」という声があがるように。そこで、新たに電子黒板を導入することにしました。
さまざまな電子黒板がある中で「ミライタッチ」を選んだ理由は、ChromeOSが入っている点や、タブレットをUSB-Cで充電しながら使える点などさまざまあるのですが、決定的だったのは「画面が反射しにくい」という点ですね。画面に光沢感があると光が反射してしまうため、教室の端に座っている生徒などは見えづらくなってしまいます。購入前に各製品の画面をいろいろな角度から見てみたところ、最も反射が少なく見やすかったのがミライタッチでした。
続いてセミナーでは、ミライタッチを授業に導入してみた感想や、現場で活躍される先生たちからの反応についても語られました。
木田:
新しいICT機器が導入されるとなると、やはり現場の先生方は多少なりとも戸惑うものです。今回も、何かしら厳しい意見が来るだろうと覚悟していました。ところが、返ってきたのはポジティブな反応ばかり。これには少し驚きました。
1番多かったのは、操作性の高さについてです。「新しく操作方法を覚える必要がない」「黒板と同じように使えて便利」といった意見が多かったですね。特別なITスキルを持っていない人でも簡単に使いこなせるのが、電子黒板の魅力なのだと感じています。
そして何より、授業の効率性が高まったのは大きな利点でした。ミライタッチは、言わば“巨大なChromebook”です。これ1台でWeb検索したり、Google Meetをつないだり、Teamsなどのアプリを使ったり…と、スマホやタブレットと同じような感覚で操作できるのが素晴らしいですね。授業はテンポ感が大切なので、余計な作業に時間を取られず授業を進められることが、生徒たちの教育にもいい影響を及ぼしていると思います。
永田:
プロジェクターを活用していた時代は、「スクリーンと黒板が重なっていて、プロジェクターを使うと黒板が半分使えなくなる」という意見がよく出ていました。ミライタッチの導入によってそれが解消されたことは、まず大きなポイントでした。
また「板書した内容をずっと保存しておける」という点も、現場から非常に喜ばれています。生徒たちが以前学んだ内容をあまり覚えていないときに、前回の板書を画面に写して復習をしてもらうことができるんです。それがあまりに画期的だったようで、現場の先生から「こうすればいつでも過去の板書を見せられるんです!」と自慢されたほどでした(笑)。
教室に「教卓」はもう要らない?教室設計のこれから
その後、ミライタッチを導入した後の教室のあり方や、各市の今後の取り組みなど「教育現場の未来」についての話が展開されました。まず話題に上がったのは、ミライタッチを導入して感じた、授業や生徒たちの変化についてです。
木田:
ミライタッチの導入により、生徒の「学んだことをアウトプットする力」や「自分の考えを表現する力」が育まれやすくなったと感じています。これまでは、生徒たちが作った学習成果物などを周りに見せる術がなく、生徒が前に出て何かを発表するような機会をなかなか作れませんでした。しかし今は、生徒のタブレットと電子黒板をつなげて簡単に画面共有ができる上、ミライタッチ上で書き込みもできます。
その結果、自らの意志で「ちょっと詳しく説明してもいい?」と前に出て発表する生徒も増えてきました。今後、ミライタッチの活用がさらに広がっていくと、生徒たちの表現活動もさらに豊かになっていくのでは?と期待しています。
続いてコーディネーターから投げかけられたのは、「電子黒板が主流になる中で、教室設計はどう変わるか」という議題。これに対し木田氏・永田氏は、それぞれの視点から独自の考えを述べました。
木田:
電子黒板を導入したことで、これまで前に貼っていた掲示物が隠れて見えなくなりました。そこから「掲示物を今後どこに貼るか?」「そもそも掲示物は必要なのか?」といった議論が交わされはじめています。今までの常識にとらわれない意見が多く飛び交っているのがとても面白いですね。
永田:
福岡市にある学校の教室はだいたい8m×8mの広さなのですが、ここに75インチの電子黒板を設置すると、教室は少々手狭になります。しかしながら、現場からは「教室が狭くなったデメリットよりも、電子黒板が導入されたメリットのほうが大きい」という声をよくもらうんです。
そのため今は、むしろ電子黒板以外のものを整理する必要があるのではないかと思っています。これまでの教室といえば、教卓・先生が作業する事務机・オルガンが教室の前方に設置されているものでした。その当たり前を見直して、たとえば必要なければ教卓を取り除いたり、オルガンを後ろに置いたりなど、レイアウトを大幅に変更してもいいかもしれません。
その後、コーディネーターも参加して「教室に事務机を置く必要はあるのか?」「タブレットを置く譜面台のようなものがあれば教卓は不要なのでは?」といった意見が交わされるなど、これからの教室のあり方を考える有意義な時間となりました。
ChromeOS搭載のミライタッチが実現する、誰もがICT機器を使いこなせる未来
第二部の大テーマは「ChromeOSとゼロトラスト」。ゼロトラストは、クラウドベースの運用を推進する上で不可欠とされるネットワークセキュリティ対策の手法。すべてがクラウド上で機能するChromeOSを搭載しているミライタッチは、ゼロトラストと切っても切れない運命にあると言えます。そんなミライタッチを導入している福岡市と鹿児島市では、ChromeOSをどのように利活用しているのでしょうか。また、ゼロトラストをどのように捉えているのでしょうか。第一部に引き続き、永田氏と木田氏にお話を聞きました。
まずコーディネーターが2人に尋ねたのは、ICT教育の現状について。ICT推進を担う2人が感じている、現状の課題や悩みについて語ってもらいました。
永田:
私は本来、各学校のネットワークのみを運用管理する役回りなのですが、教育委員会のネットワークは給食システム、人事システム、庶務システム…など他のシステムも包括しており、現在はそれらも私が管理しています。そのため、自分が開発に関わっていないシステムについての相談が来ることがあり、戸惑ってしまうことが時々あります。多方面から頼られるのは嬉しいのですが、見る範囲が広いので大変です。
木田:
永田先生の話に通じるのかもしれませんが、各部署が独自にデジタル化を進めようとした結果、種類がバラバラなシステムが乱立してしまっているのも大きな課題だと思います。やりたいことによって使うシステムが異なるので、作業効率が悪いんです。これからは、全体最適を考えたICT環境を構築していく必要があるのではないでしょうか。
かつての教育業界では、木田氏が語ったシステムの乱立などの影響で「ICTを導入したせいで仕事が増える」という本末転倒な事態が起きていました。しかしChromeOSを活用したクラウドベースの運用が進む今、ようやくICTによる業務効率化が実現しつつあります。ChromeOS搭載の電子黒板を導入したことで教室にどんな変化が起きているか、お話を聞きました。
永田:
現場の先生方からは「自分のPCを教室に持って行かなくても授業ができるようになった」という喜びの声をもらいました。授業で使う資料などは、Googleドライブにアップロードしておけば、移動先の電子黒板に自分のアカウントでログインするだけで自分のPCと同じように表示や編集ができます。これは大変便利なことだと思います。
木田:
これまでにない最新機器を導入するとなると、操作スキルの習得が大変では?と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ミライタッチは普段使っているスマホやタブレットと同じように操作できるのが嬉しいポイント。いつもと変わらない感覚で操作できるので、スキル習得にもそこまで時間はかからないと思います。
永田:
そうですよね。今のスマホに説明書がついていないのと同じように、直感的に楽しく操作できるんですよね。福岡市の学校でも、上から指示があったわけではないのに「ミライタッチの便利な使い方を知る研修」が開催されていることもあります。どの先生もワクワクしながら使ってくれているようです。
木田:
鹿児島市では2年ほど前から、コンピューターが苦手な先生のための教室を開いているのですが、驚くことに定員の3倍ほど人が集まります。少し前までは「ICT機器を使いこなせなくても、今までのやり方のままでいい」と考えている先生方が多かったように思いますが、ハードウェアやソフトウェアが進化したことで、積極的にテクノロジーを活用しようとする方が増えてきました。その姿勢を後押しできるような支援は、今後も続けていきたいと考えています。
ミライタッチは、教育DXに大きく寄与する有益な道具
続いてのトピックは「NEXT GIGA、ゼロトラストにおける電子黒板の位置付け」。文科省は、GIGAスクール構想の実現に際して「教育DXに係る当面のKPI」を示しており、クラウド環境の活用やクラウド対応の教育情報セキュリティポリシー策定など、ゼロトラストに深く関わるKPIも多く掲げています。その流れの中で、電子黒板は今後どのような役割を担っていくのでしょうか。
木田:
どの端末もログインさえすれば利用者を認証してサービス利用できる今の環境は、とても便利である一方、セキュリティ面には不安が残ります。プライベートな情報を勝手に覗き見されたり、なりすましの被害に遭ったりする可能性もあるため、ルールや仕組みづくりは適切に行っていかねばなりません。
永田:
ただ、「その場から離れるときは必ずログアウトする」などルールを厳しくしすぎると、今度は使いにくくなってしまいますよね。まずは、ログインしたまま放置するとどのような被害が起こるのかを正しく理解してもらい、先生方のセキュリティ意識を向上させることが必要だと思います。
これを受け、コーディネーターは「Googleが提供している管理コンソールの中には、電子黒板自体を管理する項目に登録するという機能もあります。このような技術的対策と、先生方が仰った人的対策をバランスよく組み立て、強固なアクセス制御を実現していくのが理想的ですね」とコメントし、2人から共感を集めていました。
最後にコーディネーターから問いかけられたのは「ChromeOSを活用した授業のあり方」について。ChromeOSによって、学校の授業はどのように豊かになっていくのか、2人の考えを語ってもらいました。
永田:
これまでは「アンケートを取ってもその授業時間内に集計することができない」など、即時性に欠ける部分があったと思います。しかし、Google WorkspaceやGoogleの各ツールを使えばすぐに集計して結果の表示までできるため、授業のテンポ感や楽しさは一気に向上しました。また集計結果を電子黒板に映せば、自分の意見が少数派か多数派か、他人はどんなことを考えているのか、といったことも視覚的に分かりますよね。このようにChromeOSは、生徒全員が前のめりで参加できる「楽しい授業づくり」に大きく寄与していると思います。
木田:
電子黒板の導入を検討する際、必ずと言っていいほど挙がるのが「1人1台タブレットがあるのに、わざわざ電子黒板まで導入する必要があるのか」という意見です。確かに一理あると思わせる意見なのですが、実際の審議を取りまとめてみると「大型提示装置は必ず必要だ」という結論に至るんです。これまで普通の黒板で行ってきた「生徒全員が一緒に同じものを見て、一緒に触れて、一緒に整理する」という過程は、学校教育において想像以上に大切なんですよね。
それに加えて、永田先生が仰ったような「ChromeOSがないと実現できない授業の形」もたくさん見えてきていることを考えると、電子黒板の可能性はさらに広がっていきますし、授業の深みもさらに増していくのではないかと考えています。電子黒板は、文科省が示すKPIを実現する有益なツールと言えるのではないでしょうか。